「まあいいわ。とにかく今日は凛をよろしくね。ドリームアイの申し込みチケットが当たったから、あなたにお願いすることにしたんだからね」

「もちろんだ。ちゃんと、ほら、俺と凛の名前で予約が取れた」

「よかった。一番人気だものね」

惟子は凛に向って笑いかけ、それから顔を上げた。

「夜八時に迎えに来るから、またここで会いましょう。あと……その時に大事な話があるの、どうしても話しておきたいこと」 

それを言う惟子は、今までとは違ってどこか苦しげな表情だった。一体何があるのか。仲山は想像を巡らせつつも、今は頷くだけに留める。

「ああ、わかったよ。なあ、見ないうちに凛、随分と大きくなったな」 

前を呼ばれた女の子は、惟子の陰に隠れて俯いた。母親は冷静に娘のことを語る。

「あなたといない時間は長かったわ。凛は恥ずかしいのよ、すぐに慣れるわよ」

「そうか、まあ元気そうで何よりだよ」

「あとこれ。必要なものを入れといたから」

そう言うと惟子は子ども用のリュックを仲山に手渡した。

「あ、ああ。意外と重いな、何が入ってる? 泊りでもあるまいし、お前はいつも荷物が多い」

仲山はおぼつかない声を出した。水色のずっしりと重いリュックを受け取る。

「日用品よ。夜まで時間があるんだから、色々必要でしょ。困った時に開けて」

「わかったよ。お前はどうするんだ?」

「一度家に帰るわ」

「そうか」

「じゃあ凛、いい子でね。夜八時にここで」

その念押しに頷いて背を向けると、仲山、と再び声がかかる。

「どうした? まだ何かあるのか」

「……気を付けて」

「あ、ああ」

一体この挨拶はなんだろうか? もちろん娘の安全には最大限気を配るつもりだが、惟子には何か言いたいことがあるようだと仲山は気付く。夜に話すという「大事な話」のことかと、首を傾げながら返答した。

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