だれもが主人公を生きようとしてばかりいることが、生きにくい世界を作ってしまってはいないだろうか。逆に、始めから主人公になることをあきらめて、いつでも隅っこにばかりいることを選んでしまい、自分を追いつめてしまっている人はいないだろうか。主人公とわき役を演じ分けるバランスを身につけると、いくらか生きやすくなるのではないか。

そんなことを思いながら、私自身のこれまでの歩みを振り返ってみた。人生に迷いはつきものだ。迷ってばかりといってもいいかもしれない。しかし、迷いのなかから、次の新しいステージが展開してくる。予測できない人生だからこそ、なにが待ち受けているのだろうと、よけいに楽しみになってくる。

生きることをつらいと感じ、迷いのなかでどうしたらいいのかと悩んでいる人に、この本を手に取っていただきたい。生きていると、ふしぎが向こうからやってきて、人生に(いろどり)を添えてくれる。視野を広げ、心に余裕をもたらしてくれる。迷いながらも、少しばかり人生を味わってきた者のつぶやきに、いくらかの時間を割いていただけたらうれしい。

第一章──出会いのふしぎ

一枚の名刺

二〇一〇年十月二日午後、私は御茶ノ水駅近くに立つ、ある大学の記念館に向かって歩いていた。そのなかの一室で、学生時代の恩師が講演会を開く予定であり、先生自身から、

「貴君の上京の日程と重なるのであれば、久方ぶりにお目にかかるチャンスですが……」

との手紙をいただいていた。東京での会合の予定はすでに入っていたが、その日までは少し間が空いていたので、ちょっと迷った。しかし私は、

「なんとか都合をつけますので、当日参ります」

と返事を書いた。

※本記事は、2021年12月刊行の書籍『ふしぎに出会う日々』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。