まえがき

昭和五十二年(一九七七年)の秋から昭和六十二年の三月まで、西武食品館に勤務して約一〇年の歳月が経ちました。その間、私は何度となく九州から関西へかけて旅をする機会に恵まれました。

想い返せば、昭和四十二年宮崎康平さんの『まぼろしの邪馬台国』を読んだのがきっかけで踏み込んだ古代史の森をさまよい続けて二〇年になります。途中、古田史学との出会いは、折に触れ私を励まし育んでくれました。いつしか、その論説について、盲目的な追従者ではなく、批判的な検証者として自己を位置付けたいと念じてきました。

しかし、浅学菲才の私にできることと言えば、一歩一歩その論証を後追いして確認することだけでした。それを歴史紀行として纏めてみました。

私に人生論を語る資格はありませんが、「運命」とは「偶然に訪れた機会(チャンス)を自己の主体的な取り組みによって、人生における転機や画期にすることだ」と思います。そういった意味で、食品館勤務の一〇年間は、まさに偶然の機会の連続でありました。

その中で多くの方々のご助力・ご好意をいただいて生まれたのが、この本です。「不惑の年」の想い出にと意を決し一年がかりでまとめてはみたものの、読み直してみると汗顔の至り。つたない文章ですが、お目通しいただければ幸いです。

また、この本の制作に当たって、編集の面で中村泰三さんに、挿絵は天野(水島)貴子さんのご協力をいただきました。記して御礼申し上げる次第です。なお文中引用文献等については、敬称を略させていただきました。

昭和六十二年(一九八七年)四月

平成十二年(二〇〇〇年)冠動脈バイパス手術を受けて、その後、門外漢ながら妻の経営する日本語学校の手伝いをすることになりました。留学生との交流と以前では考えられなかった海外へ出向く機会に恵まれ、知見を広くすることが出来ました。また、昨年は念願の《壱岐・対馬・五島の秘島巡り》に参加して新しい着想を得ることができました。

オリンピックが開催される令和二年(二〇二〇年)は術後二〇年になります。生かされている自分に何かやり残したことはないかと思い、かつて纏めたものに加筆、修正しこの本を上梓いたしました。ご一読いただければ幸いです。

著者

※本記事は、2019年7月刊行の書籍『神話の原風景』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。