【前回の記事を読む】【小説】「眠る私に話しかける女…」明け方に見たおぼろげな夢

第一章 発端

そうそう、月ノ石営業所のメンバー紹介がまだでした。私を含めてほんの五人だけの小さな営業所です。すでにお話しした所長の刑部(おさかべ)さん、副所長の私・佐伯(さえき)俊夫(としお)、今話に出た紅一点で最年長の事務の要・田沼さん、作業員の若い牧田(まきた)(いわお)君(ガンちゃんと呼ばれています)、経理の米田(よねだ)正勝(まさかつ)さん(ヨネさん)という年配の男性の五人です。

実はベテランの田沼さんが実家のご両親の介護を理由に今月いっぱいで退職したいと申し出ており、所長は頭を抱えていました。

「ここは田沼さん抜きには成り立っていかないからなぁ。ご両親を看ながら、パートタイマーとして週に二日でも三日でもいいから来てくれないかと説得してはいるんだが」

所長の心配は赴任したばかりの私にも十分察せられました。朝は一番に出社し、営業所内外の清掃から、皆へのお茶出し、所長とのスケジュール確認、お客さんや本社との電話応対やメールの送受信、役所関係の手続きまでを一手にこなし、まさに月ノ石営業所の大黒柱的存在だったからです。

「確かに田沼さんがいなくなるのは痛いですね」

「本社から異動で補充するかと言ってきているのですが、後任は田沼さんのように地元の人がいいと私は思っているんです。ネットで求人広告を出してみたら、週明けに一人面接が決まって」

「それはよかったですが、どんな人なのですか?」

「ネット応募なので詳細は会ってからですが、月ノ石在住の三十七歳の女性です」

私より五歳年上か。その女性の姿形をなんとなく想像している自分がいました。

「で、相談ですが」

これからが本題とばかりに刑部さんが私を見ました。

「実は来週本社で営業所長研修があり、私は東京に詰めなければなりません。その女性の面接は佐伯さんにお願いできませんか」

「私が、ですか」

思いがけないなりゆきに戸惑っていると、

「誰にせよ、田沼さんと同等に仕事ができる人は来ないのだから、普通に仕事ができそうならそれで十分です。あとは事務所の皆とうまくやれそうな素直な感じの人であれば」

「わかりました」

「サブで田沼さんもつけますよ。二人の意見を総合して、結論は佐伯さんが出してください」