第九章 念願のマイホーム

こんなことがあって、長野県に来た時は、玲奈は結里亜たちの家に泊まるようになった。

言い方ひとつで相手を傷つけるということがどうして貫一はわからないのだろう。かぼちゃのお金を貫一が出したというわけでもないのに。

「今回は仕方ないけど、次からは畑で採れたかぼちゃを使ってと言えばいいのに」と結里亜は思った。

お盆でお墓参りに行った時のことだ。

貫一に線香を頼まれたので結里亜は彩奈とお店に買いに行った。

いつもならあるはずの束の線香が売り切れだった。仕方なく値段が高い箱入りの線香を買って帰り、事情を話すと、「もっとよく探せばあったはずだ」と貫一が怒っている。

「探してみたけどなかったのよ、今回は箱に入っている線香を少し持っていけばいいじゃない」と結里亜が言うと、

「嫁に来て何年になるんだ、いつも束の線香を持っていくだろう」といっそう強い口調で言う貫一。

貫一がお金を出したのならともかく、人が買ってきたものに文句を言うのはやめてほしいと思った。こんなことは日常茶飯事だ。結里亜は、もう何も言う気になれなかった。涙が溢れてきた。

それを見ていた彩奈が、「私、おじいちゃんとは絶対に暮らせない」と言って怒って出ていった。

どうしてこの人は、一言ありがとうと言えないのか。人を変えることはできない、それはわかっている。ただ、感謝の気持ちをもう少し持ってほしかった。

これでは、恭一や玲奈から、貫一のことは嫌いだと言われても仕方がないと思った。