一日二十時間の勉強!

彼女との一か月を振り返って、一番驚いたのは彼女の勉強量と記憶力、そして論理的展開能力でした。

与えた分厚い教科書を自分のノートにアルゴリズム風にまとめながら読むのは当たり前で、図書館での調査、インターネットでの検討と、我が校の医学生たちではなかなか見ることのできない真剣さでした。宿題をただやってくるだけではなく、内容を踏まえてさらに深く考察しています。そのため教授室での討論が楽しかったのです。

日本人学生なら宿題の質問票に答えを書いて提出、でしょうが、彼女は紙に答えを書いてきません。頭の中にデータも答えも入っていて、大切なことは教授の前でその質問票を前にどうプレゼンし討論できるか、という姿勢でした。

宮本も与えた教科書の該当部分くらいは読んでから討論したのですが、その議論では自分の経験すべてを吐き出すくらいの思いをしました。

ラミーヤが人生の中で二度と戻りたくないと言っていたのはサラエボ大学医学部一~三年の時代とのことです。一日十五時間の勉強というので、何だ九時間寝られるのかと思ったら、学校での五時間の勉強を除いて十五時間とのことでした。

十五時間には勉強しながらの食事の時間も含まれているようです。食事の時に医学用語の英語とドイツ語の勉強のために『ER緊急救命室』や『アナトミー』などのビデオを観るのが唯一の楽しみだったと言います。日本の医学教育はまだまだ「ゆとり」の(くびき)から抜け出ていないと痛感しました。