さて、夜になって寝床を並べて布団に入ると“トイレに行っておかないとヤバいぞ!”と気付くのです。何しろ、「外に立っとれ!」のばあちゃんなのです!更に、布団が干してあって恥をかくのは自分自身なのです!

私は、「便所行って来ます」と言って、一旦入った布団と蚊帳から抜け出して外の便所に向かうのです。今でこそ農家も家の中にトイレがありますが、当時は下肥として使っていた名残で戸外でした。

しかも祖母の家は東側をお寺と接しており、お墓がチラッと見えるようなところにポツンと建っている……夜、子どもが1人で行くには非常にハードルの高い立地の、暗い穴が口を開けた汲み取り便所だったのです。

私はそこに1人で行く勇気が出ず、便所とは反対側の、家の正面からレンコン田の傍まで降りて行き、田圃に向かって思いっきり立小便したものです。

満天の星空に天の川を眺めて、トノサマガエルの大合唱を聞きながら……

帰ると祖母が、「遅かったな」と……

便所に落ちてやしないかと心配したに違いありません。

「大丈夫! ねしょんべんしないように絞り出してきた」と答えて床に入り、寝息を立てる……

長期の休みになると、祖母と2人で1週間、時には10日以上もこのような暮らしをしました。

レンコンの葉は表面に細かい毛があり水滴が丸まるのです。

月夜の晩はこぼれ落ちる玉がきれいでした……

「夜の田圃に立小便をしに行く楽しさ」を覚えたからか? 祖母の家で、私は奇跡的に一度もおねしょをしなかったのです!

こうなると、“僕は外では大丈夫!”という妙な自信のようなものが芽生え、5年生の2泊3日の林間学校も、6年生の1泊2日の修学旅行も無事に乗り切り、気付いた時には、おねしょをしなくなっていました。

「かわいい子には旅をさせろ!」と言いますが、おねしょの対処法として「気心の知れた人のところに泊りに行かせる」のは有効かも知れません。

そうです! 第3者の目を活用して背伸びをさせるのです!

子どもにとって、家で毎晩“おねしょをしないように”と意識することは難しいことです。自宅で毎晩意識させるなど、子どもにとってはむしろ酷なことであり、おねしょをしてしまうのは、十分リラックスできている証拠ではないでしょうか?

ですから、信頼の置ける知人宅に泊まりに行かせて、本人に意識する機会をあえて作ってあげるのです。

受け入れる側は、寝る前にさりげなくトイレに行かせて、成功体験を作れるように全力でサポート! もし、失敗したとしても、「どんな夢だったの?」と優しく聞いてあげて欲しいのです。そして、「大丈夫だよ!こんな人もいるんだから……」と私の話をしてあげてください。

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『子どもがおつかいに行ける社会』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。