眠れぬ夜

今日もまた、眠れぬ夜がやってくる。

「今夜は眠れないかも」という予感は必ずある。

いわゆる更年期障害というものは、女性ホルモンの低下に伴う自律神経の失調・アンバランスによって起こるとされている。つまり交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れることによって、実に様々な症状が出現するのだ。人によって症状、その出方、重症度も様々だ。

私の症状は交感神経の亢進(猛進)によるものが大きいと思う。

その日はアドレナリン(戦闘のためのホルモン)が脳と身体と心の戦闘態勢を終日、緩めようとはしてくれない。 

それは朝起き抜けから手足首、膝や肘の四肢の関節の激しい冷感と痛みで始まることが多い。インフルエンザなどの高熱が出る前の全身の関節痛に似ている。冷感と痛みの持続時間は決まっておらず、2、3時間の時もあればほぼ一日中続く時もある。

そんな日の夜は布団に入っても、アドレナリンの戦闘態勢は私の「神経」をかりたてて、ジンジンとした神経のうずきに姿を変えて私を脅かし続ける。それは一晩中続くこともある。うつらうつら浅眠(せんみん)を得てはジンジン感に浅眠を破られる、その繰り返しのうちに夜が白み始める。

朝がやってきて眠るのをあきらめて起き出すと、前述の手足首の痛みや冷感が再燃する。そしてまた不穏な神経状況の一日が始まっていく。

夜眠れなければ、きっと昼に寝てるんだろうとよく言われるが、交感神経が優位の状況では昼間も全く眠くないのだ。「ずっと寝てない日が続いたのだから今夜こそ眠れるかもしれない」という淡い期待が心を満たす。だが、今夜もまた眠れないのだ。

今日も眠れない。今日もまた眠れない……。そして、今日もまた……。眠れない毎日が着実に積み上がっていく。そして「眠らなくては」という焦りも同時に積み上がっていく。 

何とかして眠らなくては。そう思えば思うほど眠気は遠ざかっていく。

一体、私の身体はどうなってしまったのか。そしてこれから先もこのままの状態ではどうなってしまうのか。先の見えない底知れぬ不安だけが日々、膨らんでいく。

「不眠は『うつ』につながる」とよく言われるが、こうやってみんな「うつ」になっていくんだろうと身を持って痛感した。

けれどどうしようもない。眠りたいのに眠れないのだから。交感神経の亢進(猛進)症状に常に襲われながら、眠りにつくことなど到底不可能だ。けれど、何とかしなくては。