早速、自動車整備工場の社長にスカイラインにしたいと伝えた。その自動車整備工場の社長は、いかにも町工場の人のいい社長であまり技術的には信頼できなかった。でも、その社長が私に言った。

「スカイラインももうすぐマイナーチェンジしてNAPSというエンジンになるんだけど、厳しい50年排ガス規制に適合した新しい車はとてもじゃないけど勧められる車じゃない。なにしろ、全く吹け上がらないし、エンジンの回転落ちがさらに悪くなっている」と。

そういわれて焦ったわけではないのだろうが、すぐに我が家では都内のディーラーでNAPSではない48年規制の2000GTの在庫探しが始まった。希望は白か、ケンメリで一番売れていたと思われるダークグリーンの4ドアのツインキャブGTXの5速マニュアルだった。

しかし、同じようなことを考えていたユーザーがいたのか在庫は限られ、最終的には白のツインキャブ4速マニュアルのGTXか茶色のシングルキャブ5速マニュアルのGTに絞られた。結局、私が5速にこだわったので茶色の2000GTに決まった。その時、その社長からこう言われた。

「これから新車を買ってもらうお客さんには言いにくいんだけど、新しい車のドアの閉まる音が、鉄板の音がしなくなって随分軽い音に変わったんだよね」と。この一言がケンメリとケンメリの前の“愛のスカイライン”との違いを如実に表していたのかもしれない。武骨な先代に比べ新しいスカイラインは大きく豪華にはなったけれど乗り味もずいぶん鈍重になって変わってしまったと。

余談だが、私は整備工場の社長に頼んで、我が家にきたスカイラインのエンジンについて“改造”をお願いしたことがあった。もう時効だと思うが、排ガス対策のために回転落ちをわざわざ悪くしている装置を取ってもらった。カリーナに乗っている時には感じなかったエンジンの回転落ちの悪さが気になったのである。

それはNAPSのエンジンでの本質的な回転落ちの悪さとは違って、アクセルの戻りを緩やかにするという程度のもののようであったので簡単に対処してくれた。今のオートマチックトランスミッションの車しか知らない人には何の話か想像もつかないと思う。それでもケンメリスカイラインは商品としては大成功だった。

NAPSのスカイラインには排ガス対策の影響なのかデュアルのエキゾーストパイプ(エキパイ)はなかったので、私の2000GTは本当に最後のデュアルのエキゾーストパイプのスカイラインの1台であった。

これも信じられないことかもしれないが、私が自分のスカイラインの掃除をする時にはボディのワックスがけはもちろんのこと、デュアルのエキゾーストパイプにもワックスをかけてピカピカにするのが常であった。

※本記事は、2022年8月刊行の書籍『1973 青山ココパームス』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。