「ワイルド・ライフ」

ヤッホーッ!・・・

僕は心の中で 歓声上げた

氷と岩の頂きに 雲ひとつない空の中

僕は空と 二人きりだった

キャビネットひとつ分ほどの頂きに

またがり 世界を見はるかす

右脚は絶壁 5000メートル

左脚は無限の谷底へ

血肉をぶっ飛ばす風の中

僕は 荒々しくシンプルだった

氷と岩と空と風

頂きの僕には それだけだった

下界には一体 何がある?

酒に車に女の子 応援チームを罵る舌打ち

あの頂きに 登りつめれば

全てが変わると 思ってた

もっともっとと 駆り立てる声

もっと遠くへ 高みへと

巨大な贖罪 求める叫びは

けど あの頂きの上ではちっぽけだった

全てが荒々しく清冽な極みで

僕だけがただ 生きていた

残飯をあさる 野良犬のように

そして同じ自分で今 職を探してる

下界は変わらず 猥雑で

酒に車に女の子 応援チームを罵る舌打ち

だけど ゴミ溜めの脇にも花は咲き

小鳥はせわしなく 生を歌う  

僕は薄汚い生を 生きてゆく

野良犬のように 小鳥のように

ゴミ溜めに咲く 花のように

むせかえる生を 生きてゆく

僕は荒々しい生を 生きてゆく

ヤッホーと 心の中で叫ぶ

薄汚い街の中 僕の血肉はぶっ飛ばされて

明るい太陽が 丸ごと街を照らしてた

【前回の記事を読む】詩集「まかろんのおもちゃ箱」より三編

※本記事は、2022年9月刊行の書籍『まかろんのおもちゃ箱』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。