それからまた一年ちょっと経過した頃、香織が妊娠した。

「えっ、本当か?」

「うん。今日お医者さんのところへ行ってきた。おめでたですって」

香織の目が輝いている。すると幸太は「ヤッホー」と叫びながら香織を抱き上げ、ぐるぐるとその場で回転して喜びを爆発させた。

「危ないよ幸太さん、目が回る。お腹の子に障るけえやめて」

「悪い、悪い。で、どっちじゃ? 男の子か女の子か?」

幸太はそっと香織を下ろし、座らせた。

「まだわからんよ。もう少し経ってみなきゃ」

「そうか」

「幸太さんはどっちがええ?」

「もちろん男の子じゃ。大きゅうなったら野球をさせる。香織はどっちじゃ?」

「幸太さんならそう言うと思った。私はどっちでもええよ」

「そうか、父ちゃんと母ちゃんに知らせてくる。香織も佐々木のお父さんらに電話しとけ」

幸太は部屋を出て、飛ぶように階下に降りていった。

【前回の記事を読む】想いを寄せる銀行窓口の女性へ…「当たって砕ける」告白の仕方とは