無色の風の時代

「招待状きた?」

私は柊と「てんとう虫」にいた。

「きたよ。あの二人が結婚なんてな。卒業してすぐだろ?」

「うん。びっくりした。でも、なんとなくは聞いていたし」

あの二人の「付き合う宣言」から、私は少し距離を置いていた。とはいうものの、真美からは純一に関する相談を受けることがよくあった。四人で過ごす時間は減ったが、不思議なもので、真美とは、より深い話をするようになっていた。四人で会うことも何度かはあった。でも、「いつも一緒」ではなくなった。

私にも何人か彼ができた。二人のおかげで培われたコミュニケーション力は威力を発揮し、そのせいか告白受けることもよくあった。しかし、エイジのときのように長続きしなかった。何か物足りなさをいつも感じていた。

それでも、最近付き合い始めた人とは三か月以上続いている。知識豊富で、私の知らない世界を見せてくれる。もしかしたら、このまま長く付き合えるのかもしれない。

柊にも最近、年上の彼女ができていた。一番初めの自己紹介で、再受験を公言していたが、この大学が気に入って、そのまま卒業まで居ついていた。

「結婚式行くだろう?」

心配そうに、柊が顔を覗き込む。

「当たり前じゃん」

笑って見せた。私のほのかな恋心は、やっぱり見抜かれていた。この二年間、柊は私に寄り添ってくれていた。私に彼ができても変わらなかった。別れることになり、その度、私に呼び出されても、いやな顔をせずに、黙って話を聞いてくれた。

「今度のたくやさん、続いているじゃん」

「まあね。先はわからないけど」

「お前が落ち着かないと、心配で俺も落ち着けん」

「なにそれ。遠慮せず、どうぞお先に」

微笑み合った。この優しい時間が好きだ。四人組は解散したけれど、私は真美との友情も手壊したくないし、純一の今後も知っていたい。柊はこれからも愚痴を聴いてくれるだろう。もしかして柊は私のことを……。

この疑問は今まで何度も首をもたげたが、気づかないふりをした。これからもそうだ。

結婚式には、思いきりお洒落をして行こう。心に清風が吹いている。

【前回の記事を読む】親友と好きな人が交際。新しく恋人ができるも…「頬を涙が」

※本記事は、2022年8月刊行の書籍『一陣の風』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。