日本は「司法の国際化」の波に乗り遅れるな

「司法の国際化」という黒船はすでに日本の目の前までやって来ています。黒船に対抗するには、日本も黒船を持ち、世界へ向かうしかありません。

明治維新の成功を見た福沢諭吉は、「東漸する西洋文明の脅威は西洋文明で対処するしかない」と『脱亜論』で喝破しました。危惧と愛国心による「攘夷思想」で「司法の国際化」や「米国司法」を否定しても、その進出を食い止めることはできません。日本も日本企業も事実上の「国際スタンダード」である米国司法を理解し、自ら活用して、対抗できるようにするのです。

米国と日本の法律の違いを理解しただけでは十分ではありません。驚くような結果を生むアメリカの司法制度や政策とはどのようなものなのか、その根底に存在する考えとは何なのか。法律の違いの背景にある社会制度の違い、問題に対するアプローチの違い、米国司法の真髄までよく理解し、米国の法律問題に対応できるDNAを日本でも養う必要があります。

米国司法を理解することは、米国という国そのものを知ることであり、同時に日本の制度、日本という国そのものを見直すことにもなります。米国司法の原理を知れば、その合理的な面が見え、日本の制度のおかしな点や弱点、改善点も見えてくるでしょう。

日本の検察は、なぜカルロス・ゴーンを国際的な批判の中で長期拘留しなければならなかったのでしょうか。米国の「司法取引」の仕組みを知り、日本の事情と比較すれば、その理由がご理解いただけるはずです。司法に限らず、あらゆるトラブルや問題解決について、日本の制度やそれを支えている考え方を見直すきっかけになるはずです。

今が改革の時です。社会や経済の国際化とともに、司法も国際化され、各国の基準は徐々に一本化されつつあります。日本の当局も、民間企業も、この流れに乗り遅れないよう早期の対応をとってほしいと思います。日本企業はもちろん、国も、行政府も、社会における自らの機能と役割をしっかりと認識し、改革に対し気概を持って立ち向かってほしいと思います。

私ももう76歳です。司法における令和維新のため、いつにても討ち死にする覚悟です。ともに戦っていきましょう。

※本記事は、2022年10月刊行の書籍『司法の国際化と日本』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。