その晩もいつもと同じ、華ちゃんをはさんで川の字で寝た。俺も奥さんもそして華ちゃんも疲れていたからか朝まで一度も目を覚まさず、朝六時の目覚ましでみんな起きた。今日は二人とも休暇をもらえていた。

「おはよう。みんなぐっすりだったね~」

「うん、華ちゃんなんてオムツがおしっこでパンパンで漏れていたけど平気で寝てたもんな~」

「みんな大変な三日間だったんだもの、よく眠れてよかったわ。朝食をすませたらプレゼント開けてみましょう」

「そうだなっ」

けさの朝食は、奥さんが帰りがけに美味しいと評判のパン屋さんで買ってきてくれたシナモンロールとおれの大好きなロイヤルミルクティーだった。華ちゃんはいつも通り俺の膝の上に抱かれながらミルクと離乳食をすませた。

帰ってきたとき華ちゃんは見覚えのない真新しいロンパースを着ていたがお風呂のとき脱がされけさの洗濯機で洗われていた。食事の片づけも洗濯干しも終わらせた奥さんがニコニコの笑顔で過去の俺が持たせたプレゼントと写真を持ってリビングにきた。

「華ちゃん。お兄ちゃんパパからもらったプレゼント持ってきましたよ~開けてみましょう」

「若かりし日の俺のセンスだから期待しないでくれよ~」

「ううん、何でもいいのよ。まだ独身だった頃のあなたが華ちゃんのために選んでくれた物だもの宝物よ」

そう言うと、奥さんはまるで自分がもらったプレゼントを開けるときのように、はにかんでちょっと恥ずかしそうな顔をしながらそっと優しく包み紙を開けた。中身はそう、俺が選んだもので半年くらい先の華ちゃんが着れるであろう服の上下とファーストシューズのセットだった。自分で選んだのだが……見た瞬間、十年前の俺のセンス万歳! って思った。奥さんは目に涙を浮かべながらプレゼントを握りしめて俺に笑いかけ礼を言った。

「あなた、本当にありがとう」

「十年前の俺のしたことだよ礼なんていいよ」とたんに忘れていた記憶がよみがえってきた。

俺は華ちゃんと子供服の大型チェーン店へ行き、おそろいみたいな男児用パジャマとロンパースとこのセットを買ったんだ。初めての女の子の服選びは華ちゃんへの愛情と直感だけで選んだんだ。その服の柄やワッペンにある小さなクローバーは、華ちゃんに幸せが沢山訪れるようにと思いを込めたんだ。

今思うとかなり恥ずかしいことを考えたものだ。奥さんには黙っておこう。