運命の出会い

そこに圭がシャワーを浴び終えて、外のデッキに現れる。圭は千佳の横の椅子に座っている女の横顔を見て驚く。刺青をした男と一緒にいた女だ。女が軽く顔を傾け、声をかけてくる。

「あなたは先ほど海でお会いしたサーファーの方かしら?」

圭は女を見て、ぶっきらぼうにサーフィンの話をする。

「さっきはもう少しでオフザリップが決まるところだったな。女であの動きができるのはなかなかいないぜ。今、店の中のシャワーが空いたから使いなよ」

女は圭の言葉に何も答えずに椅子から立ち上がる。女はそのまま黒のビキニ姿でトートバッグを持ち、シャワーを浴びるため店の中に入っていく。椅子に座ってじっと二人の会話を聞いていた千佳が言う。

「美人にはすぐに声をかけて仲良くなるのね。ウエットスーツを洗って裏に掛けておいたから、乾いた頃にマンションから取りにくるといいわ。あの女、気味が悪い刺青男の横にいた女でしょう。ああいうツンと澄まして気取った女、好きになれないわ

千佳はそう言って椅子に座り、圭の顔を覗き込んで頼み事をする。

「来週またウインドサーフィン教えてくれる?」

ぶっきらぼうな返事が返ってくる。

「あー、わかったよ」

圭はウインドサーフィンもプロ級の腕前で、この春から千佳にも教えている。しばらく経って女がシャワーを浴び終わり、ビキニ姿で店のサーフボードを見ている。ヨッサンが声をかける。

「今見ているそのボードは、私が作った新作だよ」

女はそのボードを軽く触りながら聞く。

「今、外のデッキに若い女の娘こと座っている男の人、前の海でエアリバースを決めていたわ。あの男の人はプロのサーファーなのかしら?」

店のガラス越しに見える圭を見て、女に返事をする。

「あー、圭のことかな。あいつは小さい頃からこの店に遊びにきていて、この辺のサーフィンの大会でよく優勝していたよ」

その話を興味深げに聞いて女が言う。

「あの人の態度としゃべり方、私にはただの遊び人にしか思えないわ」

ヨッサンが笑って返す。

「あいつは見かけと違って真面目な男だよ」

女はその話を聞き流し、新作のサーフボードをまた触る。

「これとてもいいわね。今日はあまり時間がないから、今度ゆっくり見せてもらうことにするわ」