ある朝、小豆畑に行ってみたら、なんだか昨夜と様子と違うのだ。妙に土の色が目立っていた。あぁこれはきっと何日か前に散布した除草剤が効いて雑草が枯れてきたんだなぁと安心しながら畑に近づいていった。しかし、やはり様子がおかしい。部分的ではあるのだが、雑草どころか小豆の芽もないのだ!

正確には芽がないのではなく、芽が切られているのである。これはガの幼虫の一種、ネキリムシという害虫の仕業である。ネキリムシ(根切り虫)というのは通称で、正確にはタマヤマガあるいはセンモンヤガという名前である。

雨が少なくて干ばつ気味になると、このネキリムシは発生しやすくなるのだが、概ね毎年6〜7月頃の作物の芽がでかかった時によく発生する。地際で植物の茎を切り落としてしまう、農家にとってはめちゃくちゃ憎たらしい奴だ。今年はネキリムシの被害が全町的に多発し、我が農場でも大発生してしまった。小豆だけじゃなく、トウモロコシ・ジャガイモ・カボチャなど作づけしたほとんどの作物でネキリムシの被害にあった。

ネキリムシの被害は本当にあっという間にやってくる。前日、なんの異常もなく生えそろっている作物が、次の日の朝にはきれいさっぱり食害されて芽が切り取られているのである。黄緑色に輝いていた畑は一晩で寂しい土色へと変わっているのだ。ネキリムシは昼間は土中でおとなしく過ごしていて、夜間にでてきて食害する夜行性。

嘘か冗談かは知らないが、ネキリムシが発生している夜中に畑に行くと、畑中から「カリカリ……」と作物の芽が食いちぎられている音が聞こえてくるらしい。漆黒の闇の中から、そんな音が響き渡ってくるなんて想像しただけで鳥肌が立つ。

※本記事は、2022年4月刊行の書籍『山奥の笑顔百姓』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。