疲れのとれるメガネにするために

疲れを起こさないメガネ、疲れの取れるメガネというものは決して視力表の上でハッキリ見えておれば良いというわけではありません。その条件を挙げるとすれば、まずはメガネの補正原則に則ったものでなければなりません、つまりメガネを掛けた状態で若干の近視状態でなければならないということです。

近視というものはホンのわずかであっても遠方の視力低下を来すものですから、補正原則に則り、しかも遠方視力のボケを気にならないように合わせるにはよほどの注意が必要になるわけです。遠視の眼のお客さまは普段から遠方視力が良いために、わずかなボケでも気になるらしく大変神経質な人も多くいます。眼因性疲労除去を目的に合わせるメガネでは幾分遠方がボケる程度の方が効果がありますので、その説明とアフターケアが必要になります。

当店では前田医院のような強引なことはやっていません。しかし、目的の明確なお客様の同意があればやってみたい気持ちはあります。前田氏が何ゆえ、お客さまから苦情がくるような処方をするかと言えば、潜伏遠視の出現を予測して行なうからです。

潜伏遠視は毛様体筋の痙攣がひき起こすものですが、痙攣が解けるのにメガネ装用後数日ないし数週間かかる場合もあります。前田氏は経験的な実績を基に検影法で得られる値に+1Ⅾを加え、潜伏度の出現を予測して将来的に合うであろうレンズ度を処方しますからボケるという苦情が出るのです。

神経衰弱を改善することを目的としたメガネは一時的に効果があるものではなくて長く続くものでなければなりませんし、潜伏度の出現に応じてレンズ交換の回数を減らす意図があったとも考えられます。そのためにこのような一見不人気なことを行なったと思います。

眼鏡店ではお客さま相手ですから、ここまで強引なやり方はできませんので、別の方法で対処していきます。前田氏が自らの神経衰弱治療の為に一年がかりで行った経過がのちに示してありますが、この方法は大変参考になることと思います。

※本記事は、2022年5月刊行の書籍『眼精疲労に対するメガネの効用』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。