僕は何度か絶縁を考えました。しかしそれは叶いませんでした。それに歯止めをかけていたのは、「生んだ子供でもない僕をずっと育ててくれたから」という理由と、「その恩に報いることが僕の使命」という頑なな思い込み。そんな母を裏切ることができなかったのです。

また離婚を考えたこともありましたが、踏みきれませんでした。それは家内とずっと生活をともにしていきたいという本音。その時の自分は完全に母に対して他人軸でした。家内へのフォローも水面下でしつつ、母の機嫌を崩さず当たり障りなく生きる。

でも、一方で「何でこんなに自分、我慢しなければいけないのだろう」「これ以上、家内に悲しい想いをさせていいのだろうか」。そんな気持ちが、入れ替わるようにして心に存在していたのも事実です。

そして7年前のある日。最後は般若心経エッセンスが僕の背中を押してくれました。

それは「諸行無常の中で生きているのだから、人や周りの状況もすべて変わり続けている。当然自分も変わっていい。むしろ変わるのが自然」という教えです。それがしっかり浸透していたことと、同時に取り組んできた自己癒しが進む中での決心でした。

現在も絶縁状態は続いています。この状態になったことに対し、母が悪いとも僕が悪いとも思っていません。こうなるべくしてなった。いうなればこれも“ご縁”だと思っています。そう思うことで救われる。それが本音かもしれません。

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『“おかげマインド”』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。