復帰

春になってエンジン・ランアップと地上滑走を繰り返した。汗ばむ陽気の日、飛行試験が行われた。

事前に飛行隊長などにも説明したとは思うが記憶にはない。多分自信に満ちた説明というわけではなかっただろう。繊細な操縦と剛毅な性格で知られた一期生のIさんが飛んでくれることになり、「(責任上)お前も乗っとれ!」というわけで私もジャンプシートに乗り込んだ。

飛行内容はよく覚えていないがかなり思い切ったマヌーバーをやり、ストールもやったように思う。程なくして、当時IRAN(定期修理)を担当していた新明和工業へ飛行搬入した。多分、IRANを口実にして企業に検査をしてもらったのだと思う。

私は自分たちの修理が信用されていないのかと、一寸不愉快な思いをした。本来外注整備とされるべき案件を、何故、「自隊整備」としたのか疑問が残っているが、それはまた別の物語であろう。IRAN後通常の任務に復したことは言うまでもない。

その後、新明和工業の品質管理課長のYさんと会う機会があり「うちに持ち込まれても、同じやり方での修理しかできません。検査だけやらせてもらいました」と言われたので、修理法としては特段間違いではなかったのだとホッとした。

技術面での不安も幾分解消した気分にはなったが、彼女は依然として私の気持ちの中に引っかかるものを残していた。彼女との交流から私の中に芽生えた「素朴な疑問」は、熾火のようにくすぶり続けていた。

※本記事は、2022年6月刊行の書籍『コントレイル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。