【前回の記事を読む】【小説】母から眠り続ける娘へ…「貴女は私達の愛する子よ。だから、目を覚まして」

第三章【よりか】の居ない世界

その頃病院では、手術と手術の合間に調べ物をしている【医師】が居た。【よりか】の父親である。

看護師が、「また、調べ物ですか、【盾舞先生】。少しはお休みになられませんと」と気遣う。

【父親】は、「ん? あぁ。そうか、わかった。だけど、もう少しだけ」と答えた。

「【先生】に倒れられたら病院としても困ります。本当に休んでくださいね」

「あぁ、じゃあ、少しだけ休むよ。コーヒーでもいただくか」

「あの、娘さんの事ですか?」

「ん、まぁ、そんなとこだね。どこかに似た症例がないかと思ってね。……親バカと思うかもしれないが、僕と妻の間にはなかなか子供が出来なくてね……。不妊治療の末、やっと産まれた子供なんだ。本当に、可愛くてね。僕の【よりみち】の【より】と妻の【ゆうか】の【か】を合わせて【よりか】と名づけたんだ。これ以上ない、僕と妻の分身……それが、【よりか】だ。

出来る限りの愛情を込めて育てた娘だ。出来る事なら代わってやりたい。だけどそれが出来ないのが悔しくてね。僕は娘を少しでも早く元気に学校に通わせてあげたい。それだけなんだけどね。罰でも当たったかな? なかなか神様は願いを叶えてくれないんだよね」

「そんな事ありません。【先生】はこれまで何人も患者さんを救ってきたじゃないですか。その【先生】が罰だなんて……」

「それでも何人かは助けられなかった。僕でも助けられない人が居た。娘もその一人だ。悔しいなぁ~」

「先生……」

【父親】は【よりか】の身をひたすら案じていた。