【第2章】相続税の節税対策の王道、不動産投資

なぜ、不動産投資が相続の節税対策に有効なのか?

すべての資産を現金や預貯金で持つのは、相続税を節税する上では大変不利になります。

なぜなら、現金や預貯金の場合、すべての金額がそのまま相続税の課税対象資産になってしまうからです。

先ほど、「総遺産が少なければ、正確には少なく見せられれば、相続税を安くすることができます」とやや思わせぶりな言葉を使って説明しましたが、この資産を少なく見せる方法の最たるものが不動産投資なのです。

現金の一億円は、一億円すべてが相続税の課税対象になってしまいますが、一億円で購入した不動産はずっと少ない金額に評価されます。

一応、相続税法では相続財産の価格は「時価」判定されることになっています。しかし、すべての不動産資産の「時価」を把握することは、国税庁にも不可能です。

「時価」が分からないと相続税の課税ができませんので、相続税の評価の際には、便宜上、土地の部分は路線価を、建物は固定資産税の評価額を基準に評価額が決められます。

路線価というのは、国税庁が毎年決めるそれぞれの道路に面した土地の評価額のことです。路線価は市場の取引価格も参考にして算出されるのですが、市場価格よりも高くならないように、やや低めに設定されています。

一方、固定資産税評価額は、各自治体の担当者がそれぞれの建物の状況を見て決めます。(実際には自治体職員ではなく、評価を専門に行う業者に外注している自治体も多いようです。)こちらも路線価と同様に、市場価格に比べると比較的低めに設定されます。

このように土地・建物の両方が市場価格より低めに設定されるので、遺産となった時も不動産は現金で持っているより低く評価されるのです。

しかも、建物の場合は土地とは違い、年月が経てば傷んでくるので、年を追うごとに固定資産税評価額が減額されていきます。そのため、建ててから10年も経てば、固定資産税評価額が新築時に比べて、半額になることも珍しくありません。

例えば、ある人が1億円の資金で家を建てたとします。この時の土地と建物の価格がそれぞれ5000万円だったとします。(あくまでも説明のための想定です。)

この家を購入して20年後、持ち主が亡くなられ、この家が相続財産になり、相続税の評価額を算出したところ、土地の価格は購入時と同じでも、建物の固定資産税評価額が2000万円になっていたりするのです。

ご存知のようにバブル崩壊後、日本では一部の例外を除いて、土地の価格は値下がりしています。

もちろん、これから上昇する可能性がまったくない訳ではありませんが、建物の評価額は確実に下がるので、ほとんどのケースで不動産投資をした方が、現金や預貯金で資産を持ち続けるより、相続税を節税する上で有利になるのです。

加えて、不動産の場合、用途に応じてさまざまな相続税法上の特典が用意されています。これも不動産投資が相続税の節税対策で有利になる大きな理由です。

一番代表的な例が「小規模宅地等の特例」と呼ばれるものです。これは、死亡した人と同居していた家族が、死亡した人の家を相続した場合、その家の土地の評価額が80%減額されるという制度です。

80%も減額されるということは、仮に1億円の価値のある土地に建っている家を相続しても、2000万円として評価されるのです。

今の例は家の建っていた土地の評価額が減額される制度でしたが、その他の用途に使われている土地にも、条件により評価額が減額される制度があります。

但し、これらの特例はすべて建物が建っている土地が対象になっており、未使用の土地(遊休地)の場合は、評価額は路線価のままです。

もしそのような土地を既に持っているのであれば、建物を建てて利用した方が、税法上の特例が受けられるという点でも有利です。

建物を建てるにあたって借金を作れば、その分総資産が減るので、二重の意味で相続税の節税に繫がります。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『「金融大工」が知っている 一番わかりやすい相続対策』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。