「おみよさん。窯場に行って、お湯が沸騰するまで沸かして来てください」

「先生。湯を沸かしてどうするんだい」

「注射針に瘡毒や淋病の菌が付着しているので、使い回しした時に他の人にうつさないように、熱湯消毒をするのですよ」

「それ一本しか持っていないのかい」

「いや、千人も二千人も注射すると針が折れてしまうので、予備で十本は持っています」

「そうだろうな」

「ここまでで、なにか質問ありますか」

そういって、ぐるりと見回したが、みんな質問はなさそうだ。

「注意事項として、丸くなっているのを亀頭に被せる前に伸ばさないでください。伸ばしてしまうと、マラに付けられなくなりますから。宜しいですか」

「あい」

「ありがとうございます。では早速本番に入りますので、ここに寝てください」

と布団を指差した。

……!?……

「何をするんでありんす」

「お客様と同じ事です」

「みんなの見ている前でありんすか」

「そうです」

「あちきは恥ずかしいでありんすよ」

「いつもやっている事ではないですか」

「でも、人が見ている前ではやらないでありんす」

「そりゃそうですけど。でも誰かがやらないと説明は出来ませんから」

「なら、あちきでなくてもいいでありんす」

「私にも都合があるので我慢してください」

「でも……」

「目をつぶっていれば、違う事を考えていれば直ぐに終わりますよ」

「あぃぁ……」

「じゃこぅしましょ。元締」

「なんだい」

「皆さん、後ろを向いてください」

「それがいいか」

「美咲さん。それなら出来るでしょ」

「うぅん……」

「よし! 皆。後ろ向け」

「はいでありんす」

「これで宜しいですか」

「あい……」

「では、失礼します」

……♬♪♫(^^♪……

「痛くなかったでしょ」

「あい」

「元締。終りましたので、こちらを向いてください」

「早いな」

「仕事ですから」

「そうか」

ワハハハハ。

【前回の記事を読む】「淋病は無しにしてください…」「では、お尻に注射します。」

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『流れ星』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。