【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第一章 青蛙

カラス

なあ カラス 私はお前を嫌いじゃないよ

そのてかてかと光る真っ黒な羽が()を連想させるし

ギャーギャー騒ぐ鳴き声は不吉を誘うと

世の人たちは嫌うけど、私はひょっとして好きかも

お前がたった一羽で落ち穂をつついている姿なんて

まるでお爺の背中のようで哀愁が漂っている

何よりお前の鳴き声には魅力がある

つがいで夕方 かあかあと巣に戻る姿は

童謡のまんまじゃないか

きっとお山で七つの子カラスが

待っているんだろうな

お前のぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる声だって

仲間の異変を心配している声なんだってね

中でも一番好きな鳴き声は

お前たちが電線やフェンスに止まって

アルトで、お腹の音のないガスが出たような

気のない声で「かあ〜」と語尾を下げて

鳴いたときは「ラッキー!」とさえ思う

ほかにもお前を好きな理由がある

でもこれを語り出したら

とっぷりと日が落ちてしまう

母からの連想ゲームのように語らないと

とにかく私はお前を結構気に入っている