遺産分割は相続人全員で協議が必要

相続人全員の話し合いによって、相続財産の分け方を決めるのが遺産分割協議です。相続人が一人でも欠けた状態で協議を行うと、その協議は無効となりますので、遺産分割協議をする前に、被相続人の出生からの戸籍を収集し、相続人が誰なのかを確定させることが不可欠です。

相続人同士で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停の申立てをすることができます。調停では、調停委員が話の間に入り、当事者の意見を聞きながら相続財産の分け方を決めていきます。遺産分割調停がまとまらないときには、遺産分割審判に移行します。

調停と違い、話し合いではありませんので、当事者の主張や提出された証拠から、裁判官が相続財産の分割方法を決定するものです。第一章でも記載したとおり、調停・審判の件数は年々増加傾向にあり、終結するまでは平均で十一・八ヶ月ほどかかっています。

遺産分割協議が遺言に優先する?

遺言書がある場合には、必ずその内容に従わなければならないのでしょうか。

遺言書は被相続人の最後の意思表示ですので、意思を反映させるという強い法的効力が与えられています。しかし、遺言書の内容によっては、相続人の納得がいかないことや、違う分け方をしたいということも出てきます。そのために、次の場合を除いて、共同相続人全員の合意が得られれば、遺言書とは違う財産の分け方をすることが可能となっています。

①遺言書で遺産の分割を禁じている

②遺言執行者が選任されていて、その者の同意が得られない

③相続人以外の第三者に遺贈がされていて、その者の同意が得られない

法定相続分で相続遺言が無く、遺産分割協議をしていないときには、法定相続分で相続をします。誰が相続人になるのか、相続分はどれだけになるのでしょうか。

ちなみに、法定相続分で相続登記を申請する場合、相続人の一人から登記申請をすることが可能です。その場合、いわゆる権利証である登記識別情報通知は申請した人の分しか発行されません。持分のみを売却することも可能なため、気づいたら他の相続人が自分の持分のみを売却して、全然知らない人(特に不動産会社)と共有になっていたということもよくある話です。

【前回の記事を読む】認知症になったらどうする?相続不動産…「成年後見人制度」

※本記事は、2021年12月刊行の書籍『相続不動産のことがよくわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。