第二章 相続不動産の基本を知る

相続の基本

遺言による相続

(二)公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場にて、二人の証人が立会のもと、公証人が遺言者から内容を聞き取り、公正証書にするものです。公正証書は、法律の規定通りに作成されますので、自筆証書遺言のように様式に不備があって遺言書が無効になるということはありませんし、遺言書の原本は公証役場で保管されますので、偽造・紛失の恐れがありません。

さらに、公正証書遺言で自署するのは、ご自身のお名前だけですので、沢山自署するのが難しい方でも作成可能です。デメリットとしては、財産額に応じた手数料を公証役場に支払う必要があること、証人二人の立会が必要なため、その証人たちには遺言書の内容が知られてしまうことがあげられます。

ただ、これらのデメリットがあったとしても、様式に不備のない遺言書が作成できる・紛失の恐れが無いというメリットの方が大きいので、専門家が遺言書作成の依頼を受けたときには、公正証書遺言で作成されることをお勧めしています。

(三)秘密証書遺言

遺言書の内容を誰にも知られたくないという場合には、秘密証書遺言というものがあります。秘密証書遺言は、氏名を自署できればよく、パソコンで作った遺言書を利用することも可能です。

遺言書に署名・押印をして、封筒に入れたうえで、封をしてから、遺言書本文に押印した印鑑と同じ印鑑で封に押印をします。そして、二人の証人と一緒に、作成した遺言書を公証役場に持参します。封筒に公証人が所定の内容と二人の証人が署名押印をして完成です。

内容を秘密にできることが最大のメリットで、代筆やパソコンで作成した遺言書でも認められるのがよいところです。しかし、完成までの手間がかかり、封をして公証役場に持参するため、自筆証書遺言と同様に様式の不備があると遺言書が無効になってしまう可能性があります。

そして、秘密証書遺言は、作成した記録だけが公証役場に残り、保管は遺言者がしますので、紛失してしまうことも考えられます。遺言書が残されているときには、亡くなったあとに、家庭裁判所への検認手続きを経る必要がありますが、公正証書遺言はその必要がありません。詳しくは後述いたします。

図1:遺言書の比較の表