運命の出会い

圭はその後もサーフィンを楽しみ、砂浜に戻っていく。またタオルが飛んでくる。

「圭、もう海から上がるの?」

その場でウエットスーツの上半身だけを脱いだ圭が、こたえる。

「今日はとてもいい波だった。これからヨッサンの店に行くぞ」

千佳は持ってきた荷物をあわててバッグに入れ、圭を急いで追いかけていく。圭は江の島までつながる遊歩道のところまで歩いていき、後ろから来る千佳を待つために立ち止まり、刺青をした男と女がいたところを振り返る。

すると、女がボードを抱え、また海に向かって走っていくのが見える。刺青をした男はパイプ椅子に座ったまま、サーファーの女を全く見ることもなく、相変わらず黙って本を読んでいる。

圭はまた歩き出し、防砂林の間にある狭い小道を抜けていく。目の前には片側二車線になっている広い国道134号線が見え、そこに架かっている大きな歩道橋を、千佳と一緒に上っていった。

二人は国道に架かる歩道橋を下り、その先にあるサーフショップまで行き、ボードを外に立てかける。圭はその店の前にある木製のデッキの上でウエットスーツを乱暴に脱ぎ捨て、腰に手をあてたまま顔を上げ、青い空に向かい気持ちよさそうに笑顔で立つ。

それを見た千佳が近づいていき、逞しい体の圭の前でつま先立ちをし、顔を覗き込む。

「わたしより頭ひとつは高いわね。背が高くてハンサムだし、白くきれいな歯並びで、体もダビデ像のようにとてもキレイだわ」

圭はその言葉に笑って何も返事をせず、店の自動販売機でスポーツドリンクを買い、デッキの上の椅子に座る。横に座った千佳が聞く。

「圭、あの男、ここの浜でよく見かけるの?」

圭は足を投げ出し、どうでもいいかのように返事をする。

「あんな刺青をした男をここの浜で見かけたことなんか、今まで一度もないよ。サーファーばかりの砂浜で、龍の刺青をした中年の男が、パイプ椅子に座って本を読んでいるなんて、なんだか異様で気味が悪いよ」