シアーズタワーはなぜ黒一色の建物なのか。未だかつてこんな真っ黒なビルを見たことがなかった。キョロキョロしながら写真を撮りまくった。観光船に乗り、ジョンハンコックセンターに行った。八月五~八日までの三日間、カッスホテルというところに泊まった。トータルの宿泊料が一二五ドル。アメリカで宿泊するのは、シンシナティ、ニューヨーク・シティに次ぐものだった。

 

 

夜、ホテルにて日記にこんなことを綴った。

「俺は、一体何をやっているのか。アメリカに来て何を得たかったのか。英語はそもそも何のためにやっているのか。なんでもかんでもほんとに自分中心に動いている。自分中心に動いていながらいつも矛盾している。思っていることとやっていることが違いすぎる。

通りを歩いていてホームレスの人たちの前を通り過ぎてしまう自分はいったい何なのか。帰国後、ほんとに自分が完全に自己否定してそれらをやろうとするなら、もっと今回の留学を直結させていかなければならない。自分の一生を『誰かの為に生きる』生き方に変えていかなければならない。」

シカゴからユタ州ソルトレークシティーまではバスで過ごした。これは、最も長いバス滞在期間だった。我ながらよく耐えたと思う。とにもかくにも車窓からの風景が変わらない。「砂漠の道を一直線、バス一台が走る」といったイメージだ。途中、何カ所か休憩地点があったが、

「砂漠の中のオアシスか?」

と思うくらい、突如として現れる町で、バスは停まった。恐くて、バスの外に出られなかった。 

「もし、ここで置いて行かれたら死ぬ。」

と思ったからだ。店などあるのかないのかさえわからない、目に入る店や通りは閑散としていた。人影らしきものがない。

※本記事は、刊行の書籍『ロッキー山脈を越えて』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。