私の1600SRと友人の1600STはOHV1600㏄ツーバレルツインキャブというエンジンを積んでいた。“ツインキャブ”こころ躍らせる響きが当時の私にはものすごくあった。

実をいうと一口にツインキャブといっても、当時の日本ではトヨタのDOHCエンジンに装着されていたソレックスツインキャブや日産のスカイラインなどのスポーティーグレードのL型エンジンに装着されていたSUツインキャブがあって、ツーバレルツインキャブというのは、その二つのツインキャブに比べてちょっと下に見られていたように思う。

このカリーナハードトップに乗っていたのは昭和48年~50年のことだが、私は父の会社にあったOHV1200㏄のシングルキャブエンジンを積んだ4速マニュアルのカローラバンも“筆おろし”で運転していた。もちろんカローラの商用のライトバンであったのでタコメーターも付いていなかったが、このエンジンは全く吹けないエンジンであったのは鮮明に覚えている。

それに比べてカリーナ1600SRのツインキャブエンジン(しかもハイオク仕様の2T−Bで105馬力)は確かに6000回転くらいまではストレスなく回った。ほとんど2速でのことだが、5000回転あたりを超えると胸が高鳴り、シフトレバーを握る手、アクセルを踏み込む足が震えた。レッドゾーンまで回したのも初めてであった。

今から50年近くも前のことであるが、千葉の親戚の家に私の家族を乗せて高速7号線で向かったことがあった。帰り道になるが、7号線は千葉方面から東京方面に走ってくると江戸川を越えたあたりで一度少し左にカーブしてから大きく右にカーブする。そのカーブを4速のまま80キロくらいのスピードで曲がった時に、自分の運転技術以上に車線を上手くトレースしながら走ることができてとても快感だった。

信じられないと思うが、私の1600SRの売りの一つがラジアルタイヤの装着で、サイズはなんと165/70の13インチタイヤであった。その路面に対する食いつき具合を体験して、私はラジアルタイヤにいたく感心してしまった。

余談であるが、友達の1600STはラジアルタイヤではなく扁平タイヤといわれるタイヤを履いていた。私も友達もカリーナは2年ほどで新しい車に乗り換えた。友達はアメ車、私はケンメリのスカイライン2000GTであった。お互いに2台目ともなると一丁前のことを話したくなる。20歳前後の男子二人。当然話題は一応クルマと女性のことであった。

※本記事は、2022年8月刊行の書籍『1973 青山ココパームス』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。