詩人・作家 AndréBreton

アンドレ・ブルトン1896.2.19タンシュブレー─1966.9.28パリ

パリ大学医学部で学んだアンドレ・ブルトンはマラルメの詩に傾倒していました。第一次世界大戦勃発により軍に動員され、ナントの慈善病院にインターンとして派遣され、ここで従妹のマノンと恋愛に陥りますが、彼女とベッドを共にした時、欲望が果たされたことにより「恋愛」そのものに失望します。そんな折、新たに発見したマラルメとは対極とも言えるランボーの詩により、自らの詩作に葛藤していた彼は、ランボー的な詩『十二月』をポール・ヴァレリーとギョーム・アポリネールに送ります。アポリネールは彼に

「もっと自然に振舞うべきだ。幻影や単純な事柄を恐れるな」

と助言します。

ナントの病院で彼は前線で負傷して入院していた詩人で作家のジャック・ヴァシェと知り合い、彼から多大な影響を受けます。ヴァシェは阿片の過剰摂取で23歳の若さで亡くなりますが、彼の影響が後のシュルレアリスムの源泉となります。アポリネールと出会い彼を崇拝したブルトンは、会ったこともない彼の恋人であったマリーに憧れ、十四行詩を捧げ、最初の批評論文『マダム・マリー・ローランサン』を発表します。“Déjeuner de soleil en banlieue:ces dames sont tendrementdécolletés... Survient l'automne:un pont guide ces jeupestraversant le fleuve...”

「郊外での日の下での昼餐:胸元を気け怠だるく表す婦人たち…秋が来ると:セーヌを渡らせに彼女たちのスカートを橋が招く」(吉澤公寿訳)

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『マリー・ローランサンとその仲間たち』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。