一 大自然

1 大自然とは

大自然という言葉を見聞きしたとき、わたしたちがまずイメージするのは「雄大な自然」の姿ではないでしょうか。高い山の上から眺める雄大な景色は、わたしたちを日常のせわしさから解放して幸せな気分に誘い入れてくれます。

でも、一歩身を引いて冷静に考えてみると、この雄大な自然という捉え方は、わたしたち人間が自分自身を主体者にして自分の感覚で自然の佇まいを写し撮った、言わば人間中心のものであることに思い至ります。

そうではなく、わたしたち人間より先にまず大自然ありきの考え方で捉えなければならないのではないでしょうか。大自然という言葉には、わたしたち人間の私的感性を遙かに超えた深い意味合いが含まれているものと考えられます。この世の中にまず大自然があり、人間は大自然の恵みによって生を受け、今を生かされている一種の生きものであるという捉え方が正しいのかもしれません。人間は、「どう生きてゆくべきか」を問われて大自然の懐に生かされている「大自然の申し子(特に優れた子供)」であるという解釈が正しいのではないでしょうか。

和英辞典(プログレッシブ)でDAISIZENNと検索してみると、(Mother)Natureという訳が出てきます。次に、MotherNatureを『ジーニアス英和辞典第5版』(南出康世編集主幹大修館書店2014)で検索してみると、「自然の摂理」と出てきます。さらに広辞苑で摂理という言葉を調べてみると、「自然界を支配している理法」と出てきます。理法とは、「則るべき道理。規則。法則」と『広辞苑第七版』(新村出編集主幹岩波書店2018)に出ています(図A参照)。