【雨の季節】に送る詩

「遠雷」

ぱたり ぱたりと音がして

突然 叩きつけるような雨になる

慌てて逃げた どこかの軒下

雷が 街にとどろいた

明るかった空は 垂れこめて暗く

雨のカーテン越し 街はどぶ色

早く止まないかと 軒下でため息

また雷が 街にとどろく

それでも気がつけば 雨は弱まり

ねずみ色の空に 薄日が差す

まだ雷が 小さく鳴る中

そっと軒下から 足を踏み出す

まだ薄暗い空 夕陽が斜めに差しこんで

ほそく滴る ぬるい雨

もう止むだろうと 思いながら

耳は勝手に 空の向こうを探る

遠くの空で 雷が聞こえる

もう去ってしまった痛みのように

止まない雨は 弱く絡みつき

古い哀しみを 伝え続ける

どす黒かった 空は薄まり

雫があちらこちらで 滴って

ぱたん ぱたんと

のんきな音を立てる

だけど

遠くの空で 雷が聞こえる

勝手に拾ってしまう音に

浮かび上がりそうな何かを そっと抱いて

弱まる雨の中 家路を駆けてゆく