「先生、今日も店に出られますか」と元締が聞いた。

「一日は安静にして寝ていてください」

「出ても死にはしないだろ」

「それは大丈夫ですけど、激しい運動をするとペニシリンが効きすぎて、熱が出るといけないので静かに寝てもらえると、治りが早いのです」

「お風呂には入れるでありんすか」

「無論、今日は入らないでください」

「分かりましたでありんす」

「元締。やはり全員持っていますね」

「そうかぁ」

「なので念の為、全員ペニシリンを注射しておきます」

「そうしてくれるか」

「淋病は三人持っていましたが、ペニシリンで治るので大丈夫です」

「便利な薬だな」

「性病の特効薬ですから」

「なるほどー」

「元締。明日も二十人お願いします。その時に他店の店主さんたちも呼んでもらえますか」

「女郎は来なくてもいいのか」

「まず、雇主に理解してもらってからで、いいと思いますよ」

「まずは見せてやらないと分からないものなぁ」

「口で説明しても分からないと思いますよ」

「だよなぁ~」

「大丈夫ですかね」

「大番頭の銀蔵に行かせるよ」

「お願いします」

「それはいいけど……。例のお客に瘡毒をうつされない方法は」

「これから話します」

「江戸っ子は気が短いんだ。早く頼むよ」

「お女郎さんが病気を治しても、お客様が持っていて接触すれば必ずうつされます。そぅなると江戸の町中は瘡毒持ちだらけになってしまいます。そうなると、お上から遊郭禁止令が出て、店は潰されるどころか店主は、全員打ち首になります」

「そうだろうなぁ」

「それで、このマラサックを使って接触すると瘡毒や淋病がうつらないだけでなく、“ややこ”も出来なくなります」

「なるほどー」

「元締。避妊はどういうふうにしていますか」

「和紙を中に入れて防いでいるよ」

「それだけで全部防げますか」

「やはり……出来てしまうな」

「そうでしょう。どうしても隙間が出来て、そこから漏れますからね」

「これだと全部防げるのか」

「完全武装ですから、大丈夫です」

「破れる事はないのか」

「柔らかな材質で出来ていますので、弾力性があり伸び縮みしますので、石など硬いものに、こすらなければ破れる事はないです」

「うぅん……どうも信用出来ないな」

「それなら実験してみましょうか」

「どうだいみんな、見てみたいだろう」

「はいでありんす」

「それならお女郎さんに実験台になってもらえますか」

「誰にする」

「そうですねぇ……」と見まわした。

「一番前にいるお女郎さん。どうですか」

「あちきでありんすか」

「そうです」

「どうしましょぅ……」

「美咲。やれ」

「分かったでありんす」

「ありがとうございます」

「よろしゅぅおねがいでありんす」

「では説明します。宜しいですか」

「いいよ」

「今から私は下の服を脱ぎます。それでマラを出します。で、お女郎さんはマラを握り擦ってください。宜しいですか」

「えぇぇぇえ……今ここででありんすか」

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※本記事は、2021年3月刊行の書籍『流れ星』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。