第3章 情報認知

13 情報を認識しやすい明瞭表現〈具体表現〉

具体表現は視聴者が頭を使わずボーッと画面を見ていても、情報がすんなり入ってくるよう配慮しなければなりません。そのため、おもしろさの追求の前に、見やすくわかりやすい明瞭な表現が求められます。

揺れやブレのない安定した画面

撮影時は三脚を使い、FIX(固定)で撮るのが動画撮影の基本です。動きの少ない安定した画面は情報認識力が高まります。その反面、情動は喚起されにくくなりますが、理解させることを重視するのであれば、揺れの少ない安定した画面を作る必要があります。

動画スペックを見極める

動画としての情報量が増えれば単純に情報認知レベルは高くなります。ハイビジョンよりも4K、8Kなどの高解像度は画素数が多いため、細かな部分を視認しやすくなります。

また、8bi(t256段階)の色深度よりも10bit(1024段階)のほうが色の情報量が多いため、細やかな色表現が可能です。フレームレート(コマ数)が増えれば滑らかな動きが再現できます。

動画スペックは高いに越したことはありませんが、費用が高くなり編集でも扱いは難しくなります。スペックに対して知識がないと常に最高設定で収録をしてしまい、あとで苦労する羽目になります。むだにハイスペックな収録は行わず、表現に対して必要十分なスペックを見極めることが重要です。

視認性の高い画面

情報伝達重視の映像は、画面を見たときに、状況・文字などを一瞬で認識できるよう配慮しなくてはなりません。見せたい被写体と背景が同じような色だったり配置のバランスがわるければ視認性は下がり視聴意欲も減退します。

「主題と被写体の配置バランス」「明度のコントラスト」「文字サイズ・文字色・フォント選び」など視認性の高い画面作りは高いグラフィックデザイン力が求められます。

不自然さを感じさせない誇張演出

演出をする場合、現実と同じようなリアルな芝居をさせても視聴者には伝わりづらいです。明瞭な映像表現を求めるのであれば現実的にはちょっとオーバーで嘘っぽいくらいの演出がちょうどよいのです。しかし過剰な演出は作為感を感じさせやすくなるため、ライブ表現としては弱くなってしまいます。優れた演出とは誇張しても不自然さを感じさせないものなのです。

照明の役割

照明は被写体を明るく照らすだけが役割ではありません。映像表現において照明の役割は大きく3つに分かれます。

・物体や人物の形、質感などをわかりやすく見せる「立体表現」
・空気感、世界観、雰囲気を感じさせる「空間表現」
・悲しみや喜びなど人物の心の動きを助長する「感情表現」

照明とは光を作る行為と思われていますが、表現的な視点から見ると影を作る行為です。そのため「どんな光を当てようか」ではなく「どんな影を作ろうか」という視点で照明を考えると光を捉えやすくなります。

立体感を強調するライティング

立体的で質感の高い照明は被写体の具体性を高め、平面的で質感の低い照明は被写体の抽象性を高めます。以下は立体表現としてよく使われる基本的な照明の当て方です。

写真を拡大 [図1] 基本的な照明の当て方
※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。