第3章 情報認知

11 〈具体表現〉の効果

誰にでもわかりやすく伝える

物事を万人に理解できるよう伝えるためには、わかりやすく具体的に表現しなければなりません。そもそも映像という存在そのものがわかりやすい表現媒体なのですが、情報で溢れている現代では、子供でも理解できる明解な編集と過剰ともいえるテロップやナレーションでの説明が必要です。

具体的でわかりやすいことは、よいことだらけのように思えますが、必ずしもそうとは限りません。具体的で明解に説明するということは、視聴者から考える力を奪うことになるからです。

そしてわかりやすさを重視すると、どうしても子供っぽい表現になってしまいます。映像の行間が読める人間に対してはバカにした印象を与えてしまいかねません。

とはいえ、アート性の強い映像以外はほとんどがわかりやすい具体表現が求められているといえるでしょう。

メリット

・誰にでもわかりやすい
・考えなくてもよい
・親しみやすい印象になる

デメリット

・意味の解釈が限定される
・想像力が広がらない
・安っぽい印象になる

12 4W1Hで伝える〈具体表現〉

Why以外で表現する

「伝えたいこと」をわかりやすく伝えるためには、まず4W1Hを考えるのが基本です。「えっ、5W1Hじゃないの?」と思ったかもしれません。

情報認知において「Why(なぜ)」は考えなくてもよいのです。これは「Why」が必要ないからではありません。むしろ逆で、別格に重要すぎるからです。

「4W1H」が状況を表しているのに対して、「Why」は物事の本質を表しています。この「Why」の表現に関してはストーリーテリングの章で詳しく解説します。

「4W1H」は文章表現を含め、なにかを伝えるときの基本として一般常識となっていますので、深く説明する必要はないでしょう。映像表現において、なにかを説明する際は、言葉をビジュアルに変換して組み立てていきます。

When(夜)セミ(夏)初詣(正月)(江戸時代)

Where通天閣(大阪)黒板の落書き(学校)十字架(教会)

Whoスーツ姿(サラリーマン)セーラー服姿(女学生)

Whatパソコンで作業(仕事)イヤホンをつける(音楽を聴く)

How笑顔(楽しい)(悲しい)頭を抱える(困った)
   貧乏ゆすり(落ち着かない)重い足取り(疲れた)

具体表現は文脈が重要

4W1Hを使い状況説明をするときは文章と同様に文脈を意識しなければなりません。

優れた4W1H表現は言語化していくと小説のように違和感のない文章になるはずです。逆に文章にならなければ必要カットが足りていないはずです。また特定のカットがなくても文章が成立しているのであれば、そのカットはなくてもよいのです。

テロップやナレーションはあくまで補足なので、映像だけでも状況がしっかり伝わるよう言語化しながら組み立てていきましょう。

写真を拡大 [図1] 4W1Hを使った状況説明

上記の例は5カットで表現していますが、時間制限が決まっているコンテンツでは4W1Hの情報をいかに少ないカット数と短い時間で表現できるかが重要になってきます。以下は同じ内容を2カットで表現しています。

写真を拡大 [図2] 4W1Hを使った状況説明(2カット)

①外から部屋のなかを覗き込むようなカットに変えることでWhenとWhereを同時に見せる。②は上記の③と同じような構図だがワイドレンズを使うことで、手前の笑った2人を強調し、「家族4人」と、「父と母は楽しそうだ」を同時に表現している。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。