由美は結婚後、自分で病院へ行き、かぶれを起こすような治療もしてきました。薬を塗り、相当、痒かったようです。痒さを伴うかぶれも大変で、治療も熱心には、できなかったようです。仕事も続けながら、そのうちに由美は妊娠し、治療することからは遠のいてしまいました。

出産後、落ち着いたらまた治療をはじめてほしい。私は、病院通いや子守りの協力をするよ、との思いでいました。

しかし由美は授乳中の服用薬の心配、そして頭に塗る薬について、小さな子どもが親の顔や頭をさわるだろうから、ということも心配になるので、今は治療するつもりはないと言います。

その後長く授乳が続き、子育ても忙しそうです。そして二人目なども考えているかもしれません。自分の病気にまで気が回らないことだと思います。親が子を思う気持ちは、それぞれに人が違っても同じでしょう。私が間に入り込むわけにはいかないと思っています。

ある夜のこと、私は由美たち家族と旅行している夢を見ました。温泉に入るときに頭をよく見れば、「あっ、結構そんなに生えてきているんだ、あー、良かったねー」と私が由美を見て会話しているのです。

夢の中で私は、とても安心したひと時を持ちました。とてもリアルで嬉しく思えた気持ちの最高潮だっただけに目が覚めたときは一人で落ち込みました。

いつか子育てが一段落し、医療もさらに進んでいるはず、そのときがくれば、ぜひまた治療に向き合って髪を戻してもらいたいと考えているのです。

そう思う私のことが足かせになっているのかな、とも思います。もう自分で選択し、生きていく年齢です。それでも永遠に親子関係は変わるものではなく、子を思い、治ることを望む気持ちは、変わらないのです。

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