『ツイスト・アンド・シャウト』

まず、このアルバムのレコーディングは一日で行われ、約十時間以上かかったということ。そして、ジョンは風邪をひいていたということ。加えて、この曲が最後にレコーディングされたということ。その三つがもたらした奇跡です。

後半になると当然声も掠れ、腹の底から絞り出し、叫び散らすような歌い方をしています。その結果、ハスキーで格好良いシャウトが生まれ、かなりロックンロールな仕上がりになっているのです。これ以上格好良い歌声をまだ聴いたことがありません。

ジョンの声を、細く繊細な声とイメージしている方も多いと思います。ビートルズ後期やソロ時代は確かにそうです。“作る曲が変わったから歌い方も変わった”というのももちろんですが、初期ビートルズのジョンの声が、ここまでハスキーで荒々しいのは、このようなレコーディング方法も理由の一つなのだろうと思います。

ですがジョンは当時のレコーディングを振り返り、「情けなかった」と語っているようです。この曲は“トップ・ノーツ”の曲ですが、ビートルズはそれをカバーした“アイズレー・ブラザーズ”をカバーしています。ですが、以降の人達はビートルズの『ツイスト・アンド・シャウト』をカバーするでしょう。まさにオリジナルを超えています(ビートルズあるある)。

ちなみに当時としては珍しいことですが、ビートルズは自分達で作詞作曲することに拘っていて、カバー曲をシングル曲としてリリースするのは、乗り気ではなかったようです。そして共作も多かったことから、ジョンとポールどちらが作った曲でも、クレジットには「レノン=マッカートニー」と記載し、これはビートルズ解散まで続くのです。

そしてシングル曲をアルバムに収録するということも、避けている一面があり、前章でも述べたように、「同じ曲を二回買ってもらうのは嫌だから」

ジョンはそのように述べ、このやり方は“Fabulous Foursome”=“素晴らしい四人組”と称され“Fab Four”と呼ばれるようになるのです。

けれど記者からの「ファンに一言!」の問いかけに、ポールはこんなジョークも飛ばしています。「僕たちのレコードをいっぱい買いなさい!」

ここでアルバム未収録のシングル曲を紹介。

『フロム・ミー・トゥ・ユー』

ファースト・アルバムのリリース後、すぐにリリースされたシングル。ライブの移動中に車の中で、ジョンとポールがファンへの感謝を込めて作った曲。この頃には共同作を含め、ツイン・ボーカルも多く見られました。

曲と同時に始まる切なさを交えたコーラスは印象的で、曲の後半、コーラスとハーモニカが重なるところに、ビートルズの魅力を感じます。ポールも「初期のビートルズで特別好きな曲」と述べています。(赤盤収録済)

『プリーズ・プリーズ・ミー』そして『フロム・ミー・トゥ・ユー』シングル曲二作連続の大ヒットは、まさにその人気を確立させるものになり、その三ヶ月後には更なる大ヒットで、その人気は不動のものになっていくのです。

※本記事は、2022年7月刊行の書籍『Listen to The Beatles !』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。