あまりの大きさにお父さんの目も点になっています。

「こんな大きなの、大人の自分でも出せない」

ボソッとお父さんが一言。その後、排便を薬で助けながら、緩くガバガバになった腸が細くなるのを待ちました。三か月ほどたった時の再診でのこと、医師診察前に問診をしていた看護師が嬉しそうに、

「マコト君、今日は先生に何か直接言いたいことがあるみたいですよ!」

元気にドアを開けて飛び込むように入ってくる男の子!マコト君です。

「先生、保育園でウンコ出た!!スルッと出たよ!」

後から、お父さんが満面の笑みで登場し、

「先日嬉しいことがありました。保育園で先生が驚いて話してくれたんです。“この子はこんなに活発で、ごはんもモリモリ食べる子だったんですね~~”って言われたんです。その場で、嬉しくて泣きそうになりました。それまでどんなに辛かったんだろう、治療できて良かった~~」

まるで北風と太陽?十歳のサトル君

このコロナの時代は高齢者のみならず、実は子どもの生活にも重大な影響をおよぼしています。お父さんお母さんとともに十歳の男の子サトル君が来院しました。ご両親は心配そうに、

「従来便秘気味だったんですけど、ステイホームをきっかけにひどい便秘になったみたいなんです。一か月前に病院で浣腸をかけて以来まともな排便をしていないんです。いろんな病院でいろんな薬をもらったけど出ません。最近は便も尿も失禁状態で、学校にも行けず、食事もとれず、痩せてきました」

当院が五軒目の病院受診でした。腹部を触診すると、骨盤から肝臓に接する上腹部まで、フットボールのような巨大な便塊を触知しました。肛門はいつも開きぎみで便塊がかすかに見えています。まずはこの便塊を除去しなければ治療は始まりません。

一週間かけて何回もオリーブオイルを肛門から注入し何とか便を軟らかくしようとしました。一週間後にいよいよ特別な浣腸を行いました。宮本とご両親が、がんばれがんばれと励ます中、サトル君は外来の大きな身障者用トイレの片隅で足を突っ張らせ、便を出したくても出すのが恐ろしくパニックになっています。

※本記事は、2022年4月刊行の書籍『たたかうきみのうたⅢ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。