【前回の記事を読む】「遺書さえ残っていれば…」司法書士も頭を抱える空き家の遺産相続問題!

第三章 空き家と相続の密なハナシ

4 空き家対策はお元気なうちに!

ご紹介した「家族信託」「任意後見」「遺言書の作成」は、いずれも本人(老親)の判断能力がしっかりしていることが大前提です。認知症の進行などで判断能力が低下してしまうと、これらの対策をとることはできません。選択の余地が多く残されているうちに、家族で実家の行く末についてぜひ、話し合ってみてください。

また、思い込みなどから不測の損害を被らないように、必ず専門家にも相談をしてみることがとても大切です。

第四章ポイントは不動産! 事例に学ぶ遺産分割における注意

相続に関するトラブルの中に、「残された遺産をどのようにして分けるか(遺産分割)相続人の間で意見がまとまらず、揉め事に発展してしまった」ということがあります。そして、遺産分割に関する揉め事は近年増加傾向にあります。遺産分割が揉め事に発展しやすい理由の一つとしては、相続財産の大部分を不動産が占めているということが考えられます。

そこでこの章では、まず不動産が遺産分割において、どのようにして争いの火種となっていくのかを事例を見ながら検証し、次に遺産分割に関する揉め事が増えている理由を分析します。そして最後に、遺産分割に関する揉め事をどうやって回避するのか、その方法について説明します。

1 リアルなトラブル事例①  遺産分割で揉めてしまい家族の関係が壊れてしまった

【事案の概要】

・母が5年前に亡くなっているが、その際、母の財産(貯金500万円程度)はすべて父が相続した。

・被相続人は父。数年前から軽い認知症となっており、長男の妻が介護していた。

・相続人は長男(45歳)、長女(42歳)、次男(39歳)の3人。

・相続財産は土地(評価額3000万円)、建物(評価額は1500万円で父と長男が半分ずつ共有)、現金・株式・その他金融資産(1000万円分)。

・遺言書はない。

・長男は妻、子2人(16歳、15歳)とともに父と同居していた。実家から独立したことはない。

・長女は夫、子(7歳)とともに自身の持ち家に居住中。・次男は大学時代に下宿、そのまま独立し現在は妻、子(10歳)とともに賃貸住宅に居住中。

事案における相続人…被相続人の関係

父親が他界し、相続に関わる手続きを長男が仕切ることになりました。相続財産はすべてを合計しても4750万円程度、心配していた相続税も基礎控除の枠内であることが分かり安心していました。そこで、長女、次男とともに遺産分割について話し合うことになりました。その際長男の提案した分割案は以下の通りです。