実際にこんなケースがあったとか。

保険料を間違えて引き落としてしまうという、保険会社としてあってはならないミスを犯した際、お詫びに伺う前に、彼はそのお客様の家族情報を確認しました。3歳のお子様がいらっしゃるご家庭でした。

彼はその時、何を持参したと思いますか?

答えは「アンパンマンのお絵かきボード」。

(※玄関のチャイム音)「ピンポーン」

メンバー「夜分に恐れ入ります。○○保険の△△です。この度の保険料の引き落とし誤りにつきましてお詫びとご説明に伺いました」

お客様「どうぞ(まだ、怒っておられます)」

メンバー「◇◇様、この度は誠に申し訳ございませんでした。(目をお子様に向け)ぼく、こんばんは、よるおそいのにごめんね。おじさん、パパとママとすこしおはなししなきゃいけないんだ。おはなしがおわるまで、これであそんでまっていてくれる?」

お子様「うん、分かったよ、おじさん、ありがとう」

メンバー「ありがとう」

「◇◇様、改めましてこの度は申し訳ございませんでした……」

お客様は嫌味の一つでも言わないと気がすまない、いや、嫌味どころか、怒鳴りつけてやろうと思っていたかもしれない。

でも、この先手「一撃」で勝負は決まりました。

これは「強さ」ではありません。このメンバーはこの結末を計算していたわけでも、予想していたわけでもありません。

ご迷惑をおかけし、不安なお気持ちにさせてしまったお客様に、改めてお時間を頂くことになり、大変申し訳ないことだ、せめて、少しでもお客様のご気分を害さない手当てをしよう……。そんな「気持ち」が生んだ行動です。

繰り返します。

「共感」の上位Level。「共感Level2」は、「その人が大切にすることを自分も大切にする」こと。

「肯定」と並んで、「ありがとう」に匹敵するチカラを持っています。そして、この領域にたどり着けば、相手の「心理的安全性」は大きく担保できることになります。

実際、スポーツチームや会社組織など、目を見張る実績や成果、結果を残す「強いチーム」に共通していることは、「メンバーの目標が一致していること」です。

「インターハイ出場」「売り上げ目標達成」「大学駅伝優勝」「全国1位」等々。メンバーが大切にしたいことが一致している。

同じことを大切にすることで、「一体感」や「仲間意識」は強く養われます。

同じ宗教を信仰する人同士や、趣味が同じ人同士が結婚するケースをよく目にします。この現実は「共感Level2」の持つチカラを証明してくれていると思われませんか?

更にいえば、逆もまた然り。「その人が大切にすることを自分がないがしろにした時」。喪失する「絆ポイント」は計りしれないものになるでしょう。

※本記事は、2022年5月刊行の書籍『古くて新しいニューノーマル社会の概念 絆ポイント』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。