神谷は気絶したまま、谷の底に落下してゆく。一秒、二……といったところで神谷は気がついた。

「バンジーできた! 大成功!」

と思いきや、突然、猛烈な風がいきなり顔に当たった。

落下の最下端近くであればもはや落下が終了しているので何の衝撃も受けないはずなのに、緊張のためか、神谷は最下点に達する前に気絶が終了してしまったのである。

まだ十分に勢いの残った状態で正気に戻り、その衝撃を受けてしまった上、すぐに最下点に到達し、何と、そこから急にゴムに引っ張られて上昇に転ずることになる。落下速度よりはましとはいうものの、この返しの上昇速度も相当なものなのであり、そして、また落下となる。

そして、この二度目の落下もまた最初の六、七割の高さまで落ち、また上昇に転じる、そして三度目……という恐怖が繰り返される。ただでさえ、バンジーに弱い神谷にとっては、もはやその恐怖は想像を絶するものであった。

結局、普通のバンジージャンプよりも強烈な刺激を受けてしまい、神谷は本当に気を失うこととなった。

その後、神谷は、気を失ったまま、白目をむいて鼻もよだれもたらした超みっともない姿で仲間に引き上げられることとなった。

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※本記事は、2022年6月刊行の書籍『異能クラブ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。