第2章 ナイスデイへの歩み

TCの方法

一般的なTCの方法は、グループを形成し定期的に話し合う、デモンストレーター(場の雰囲気や発言を導くための指導的立場の人)が指導者としてではなく仲間の一人として振る舞う、そして自分自身のつらい過去を告白して世間ではプライバシーに触れるような深刻な話をしても許される雰囲気を作ることから始めます。

例えば自分の父親はアルコール依存症で19歳の時に自殺したことをグループの中で話して、心のトラウマにまで触れるような深い発言をメンバーがするように場の雰囲気を導くとともに会の進行をコントロールすることから始まります。

このことによってメンバーたちは普段話せないような心の深いところに潜んでいるトラウマ的な深いものを引き出され、何でも話せるという雰囲気が生じるのです。そうすると今まで言えなかった、家庭内で受けた虐待や、いじめなどを仲間に話し出すようになります。そういうことを話しても良いのだということがわかり、メンバーは次々と自分を解放し心の底にたまったことなどを話し出すようになります。

そういう中で同じような環境で苦しんでいる仲間同士が打ち解け合い、深くわかり合うことができるようになります。こうして今までにない互いを認め合うコミュニィティが生まれ、新たな人間関係から、メンバーが新たに生まれ変わり、問題の原因となる深い心の傷から救われ、立ち上がることができる可能性があることがわかってきたのです。

こういう俗世間から離れた価値観に支えられた治療的人間関係の場は聖域(サンクチュアリ)といわれています。

TCはアメリカとイギリスで20世紀の初めごろから先進的に取り組まれていましたが、日本でも徐々に取り組むところも増えてきています。

今までの治療法では医者や心理学の専門家が個人的にカウンセラーとなって一人の患者と向き合い長い時間をかけて治療を試みてきました。しかしTCは個人対個人ではなく、コミュニティの場で治療が行われるのです。言い換えればコミュニティ自体を治療するということで、まったく考え方もやり方も違っています。

こうして集団を全体的に治療するようになっていったのです。そして集団が治癒的になると、今までの方法では治らなかった人でも、このメンバーの中で治癒していく効果も高いことがわかってきました(ただし施設によって従来の個人療法との併用も、必要に応じて行う場合もあると思われます)。