2章 責任構造物としての防災施設の使命

発展進化が阻まれている既存の防災構造物

人間は時代時代の最高技術で自然災害と戦い続けてきた

防災目的に構築している既存構造物はほとんど全てが「土堤原則」を主体とした構造で、地球の上に土砂を盛った三角錐型の長大構造物が主流である。またそれをコンクリートで被覆したものもある。

海中に構築する防波堤や岸壁は、一個が100キロから数トンの割石を基礎材に使用し、捨石として海底に敷き詰めて調整し、その上に「ケーソン」と呼ばれる数十トン、数百トン、数千トンあるコンクリートでできた箱形状のブロックを沈めて並べ、長大な壁体を造るのが主流である。いずれの構造物も地球の上に載せている「フーチング構造」と言われるものであり、自然災害の威力を受け止める防御原理は「構造物の自重」に頼る構造である。

自然界が発するエネルギーは、地震による衝撃波や、津波による波力、台風、洪水、高波、土砂崩れ等であり、それぞれの要因によって発せられる起振力や総力は個別に違うが、発生するエネルギーはいずれも大きいものである。この自然の強力な破壊力を防御するのが防災構造物であって、古人がその時代の資材・建材を使って最高の技術を持って施工にあたり、自然災害と戦い続けて今の近代文明の樹立に辿り着いたのである。

最新の科学でできた資材と最新技術による工法への転換が急務

有史以来の戦いは、気まぐれな自然界の挑戦を、人間が人知で受け止めて勝敗を決してきた。人間は時代と共に進む科学技術を駆使し自然に立ち向かってきたが、その中で特に強敵となるのが「水」である。「水を制する者は国を制する」と言われるが如く、水は人間にとって必須の宝であるが反面扱いにくく、変身すると一変して荒れ狂う恐ろしい自然界の怪物となる。

数ある自然災害の中で、この水の災害を制するために構築する河川堤防や防潮堤が、国民の身近に幅広く接している防災構造物の代表である。

[図1]「構造物の自重」に頼る構造の防潮堤・防波堤(フーチング構造)
写真を拡大 [写真1]東日本大震災で崩壊したフーチング構造の防潮堤
写真を拡大 [写真2]東日本大震災で崩壊したフーチング構造の防潮堤

これらの防災構造物は時代と共に発展進化していくべきものでありながら、行政の前例主義の暴挙に阻まれて進化が止まっている。災害の前例を教訓として同じ過ちを犯さないことが人類の唯一の知恵と力であるのにかかわらず、毎年自然の力に打ち負かされて多くの犠牲者を出している。

業界では早くから解決方法を確立している。一日も早い国内全河川の抜本的な見直しが喫緊の課題である。昔ながらの土堤にいくら金を掛けても、改造しても、根本的な構造原理が大昔にできた人力主体のものであり、非科学的であること極まりない。国民の安全と安心を守る防災構造物は、最新の科学でできた資材と最新技術による工法で構築された責任構造物でなくてはならない。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『国土崩壊 「土堤原則」の大罪』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。