結果として、路線価と時価の乖離と合わせると三重に評価を下げることも可能になります。このような理由から、不動産(特に賃貸不動産)が相続対策として保有されることが多くあります。

一般的には、都心部の不動産が路線価と時価の乖離幅が大きい傾向があり、また㎡単価が高いことで小規模宅地の特例等を適用した場合の減額効果も大きいため、相続税の減額効果は高いと考えられます。

相続対策においては、このような保有不動産の時価と相続税の評価額の差額という視点から検討いただくことでより効率的な対策をとることが可能になるかもしれません。

配偶者居住権

令和二(二〇二〇)年からの相続法の改正に伴い、新たに配偶者居住権という権利が創設されました。これは「残された配偶者が住み慣れた自宅に住むことを守る権利」といえるかと思います。

相続には様々なケースがあります。自宅が遺産に占める割合が高い場合などに、配偶者が老後資金の備えとして預金などを多く相続すると住み慣れた自宅を出ていかなければならないケースや、自宅を相続すると老後資金の備えができなくなるケースが多々ありました。そのような弊害を解消するために制度化されたものと考えられます。

相続の基本

相続不動産について具体的な内容に入る前に、相続の基本についてお話ししておきます。

生前対策はいつまでに?

もめない相続にするためには、生前対策が大切といわれますが、そもそも生前対策はいつまでにしなければならないものでしょうか? このような質問をすると、「亡くなるまででしょ」とおっしゃる方が一定数いらっしゃいます。

ですが、正解は「認知症になる前まで」です。認知症になると、判断能力が不十分な者として、法律行為を行うことができなくなります。つまり、遺言書を作成したり、生前贈与や不動産の売買・賃貸借契約をしたりすることができなくなるのです。そのため、生前対策は、「亡くなるまで」では遅く、「認知症になる前まで」に行わなければなりません。

さらには、生前対策をとる年齢が若ければ若いほど、講じる対策の選択肢が増えていきます。

【前回の記事を読む】「相続対策で不動産に投資する」とは、どのようなことなのか?

※本記事は、2021年12月刊行の書籍『相続不動産のことがよくわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。