予定通り神社巡りを終え、私たちはホテルのチェックインをすませて部屋で一息ついていた。あえて食事が付いていない宿泊プランにしているため、荷物を整理して身支度を整えたら夕食に出かける予定だ。

リサが探してくれていた、日本庭園の綺麗な和食レストランでご飯を食べた後、腹ごなしがてら周辺を散歩する。昼間は長袖一枚でも過ごせるが、夜は少し肌寒いくらいだ。それでも暑がりの私にはちょうどよく、アルコールで火照った頰を風が優しく撫でてくれる。

ホテルの敷地内にあるコンビニに寄り、アイスクリームやお菓子、アルコールを買って夜に備える。もちろん、部屋に戻って二次会だ。

食事なしの宿泊プランでは二次会に備えて食事の量や時間を調節することもできるから、私たちはよくこうして過ごしている。最近ではコンビニやスーパーでもその地域の特産物や限定品が売っているので、部屋の中でもその土地の食材を堪能することができる。

まずは昼間ワイナリーで買っていた島根ワインを開け、改めて乾杯する。二人とも現在は恋する乙女だけど、それでも結婚や仕事、人生に憂いや悩みだってある。

私は、結婚に対する思いをリサに聞いてもらった。何が何でも結婚したいわけではないけれど、チャンスがあればしたいし、子どもだって欲しい。ただ、既に結婚した友人や知り合いの話を聞いていると、当たり前のこととはいえ辛いことが多い。

自分の時間がない、子どもの養育費に苦労する、夫が浮気しているかもしれない……独身に戻りたいとまで言う人もいる。私の懸念事項はそこだ。一人でいることに慣れ、家に常に誰かがいることがあまり想像できなくなってしまった。

どんなに永遠の愛を誓ったとしても、夫や子どもと一生一緒に過ごす自信が持てない。自分一人のこともろくにしっかりできていないと思ってしまう私には、自分以外の面倒を見る、誰かと生きていくという覚悟ができない。

もちろん、家で誰かが待ってくれているとか、子どもの成長を見守り続けられるというのは、どんな困難をも上回る幸福であろうことも承知している。子どもは好きだし、そんな喜びも可能なら味わってみたい。そんな煮え切らない思いが言動に出てしまうのか、今まで結婚を考えるほどの交際に至ることはなかった。

対してリサは、結婚願望が強い。恋人を作らずに複数の異性と出かけるよりは、何よりもこの人という一人が欲しいと常に言っている。高齢出産だったという両親にも、早く孫の姿を見せてあげたいそうだ。

とはいえ、ともに理想や願望はあっても現実はその通りとは限らない。私は一人に深入りせずに複数と気ままなお付き合いをしてもいいかな、なんて思っている割には一度気になる人ができると他の人には目が向かないし、オンリーワンの存在に会いたいリサは現在、複数の人と会っている。理想と現実が見事なまでに真逆で、これにはお互いに苦笑するしかない。

その後も仕事に対する不満とか仲のよい上司の話、大学の思い出話、明日の予定の確認、一周してまた恋バナ、と話していくうちにアルコールの空の瓶は増え、夜は更けていった。

明日は鳥取を観光する予定だ。

【前回の記事を読む】【小説】不安交じりの初デート「どうしよう、すごく楽しい」

※本記事は、2022年5月刊行の書籍『私たちに、朝はない。』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。