麻薬取締官のスミレと海上保安官のショウタのミステリー恋愛小説
「綺麗な人だったな、まあ、俺には関係のないことだけど」。恋人のいないスミレは、学生時代の友人・リサと一緒に、海上保安部の最寄り駅で開かれた婚活パーティーに出かけた。そこで海上保安官であるショウタとカイリと出会う。リサとカイリはすぐにカップルとなる一方、スミレとショウタはお互いに惹かれあっているにも関わらず、なかなか進展しない。スミレは麻薬取締官という立場を隠さざるを得ず、またショウタも過去の経験から恋人を作らない主義を貫いているからだ。
そんな中、「海上保安官の一部で『ブツ』が出回っている」という噂を耳にする。要マーク人物はショウタに近い人物かもしれない。ショウタに惹かれながらも、任務を遂行するスミレは――。※本記事は、はしばみじゅん氏の小説『私たちに、朝はない。』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
何はともあれ、ショウタとの二人での食事の話をリサは自分のことのように大興奮で聞いてくれた。
「それは嬉しいね! 脈ありじゃーん!」
嬉しさと恥ずかしさをごまかすように、私はリサに水を向ける。
リサも話したいことがあったようで、すぐに自分の話に移ってくれた。彼女も一度朝木さんと二人で会ったようだ。帰り際にはちゃっかり手をつないだというから、さすがの進捗状況だ。次回私と会う頃にはお付き合いが始まっていてもおかしくない。
でもなんとなくさ、と少し寂しげな表情でリサが呟く。
「ただ、見た目が好みとか、好きって感情だけでうまくいく年齢ではなくなっちゃったんだなあ」
何か思うところがあるのかなと気になったけれど、カーナビが目的地周辺に着いたことを知らせたため、それ以上聞くタイミングを逃した。けれどその言葉はこの先の私たちを暗示するかのようで、なぜか私の心に響いた。