【前回の記事を読む】作品集「黒い花Ⅱ」より三作品


ものさびしい夜に

打ち捨てられた夢を(つむ)ぎつつ

ものさびしい夜に心をひたす

あざやかな朝の光を望みながら

暗い情念を繰り返すまいと ──

漆黒の闇に目をこらしつつ

その奥にあるものを掴まんと

仏僧の如く念じながら

息をつめて掬い取らんとしている

何の想いが許されよう

その空しい徒労になど ──

はるかな陰りにこそ触れさせ ──

ありあまる天と限りある時と

悲しいまでの美しさに気付いて

なすすべもなく手をこまぬいており ──

「 髪バンドした黒衣の女 」 ─油彩、F10─