③遺言書の作成

「実家凍結問題」が起こるパターンとして、親の死亡後に遺産相続がまとまらないというケースもよく見受けられます。

両親亡きあと、空き家となった実家は、将来にわたって誰も住む予定がないのであれば、売却してしまうのが理想的です。しかし、不動産を亡くなった方名義のまま売却することはできません。亡くなった親名義の不動産を売却するには、その前提として、相続人への不動産名義変更(相続登記)が必要です。

不動産名義変更(相続登記)をするにあたって、誰が名義を引き継ぐか(実家を相続するか)を決める必要がありますが、このときに遺言書があると非常にスムーズです。

遺言書で実家を相続する人を決めておけば、原則として遺言書通りにその人が実家を相続します。相続した人が、その後に実家を売却をすることも自由ですし、売却まで遺言書で指示してしまうことも可能です。

このように、遺言書が残されていれば、実家が放置空き家として問題化する恐れは少ないでしょう。

ところが、遺言書が残されていないと話は変わってきます。遺言書が残されていない場合、遺産の分け方は、相続人全員参加による「遺産分割協議」によって決定しなければなりません。

相続人全員で、遺産の分け方について合意し、実印と印鑑証明書をつけなければならないのです。この遺産分割協議がスムーズにまとまる保証はありません。

「争族」に発展するケースのみならず、相続人の中に行方不明・海外在住・認知症・未成年などの事情が絡むと、非常に時間がかかることがあります。

そうこうしているうちに、当初の相続人にも亡くなる方があり、当事者が枝分かれでどんどん広がっていくケースもあります。こうして遺産分割協議が難航し、その間、空き家となった実家が処分できず、管理もあいまいな状態で老朽化が進んでいく、というのが本当によくあるパターンなのです。

私自身、日々の業務にあたるなかで、ご相談者様から事情を伺い「遺言書さえ残っていれば……」という話になることが度々あります。

※本記事は、2022年4月刊行の書籍『そうだったのか! 相続のトリセツ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。