その日の夜、佑介は、裕美に、「今日、麻尾君ちに行ってきたんだけど、メシシのサイン入りのユニフォームがあったんだよ。すごいよ」と目をきらきらさせて報告した。

それを聞いて、裕美は、

「たしか、パパの会社にも有名な選手のユニフォームが飾ってあったわね。パパの会社がどこかのチームのスポンサーだって聞いたことあるから、その関係かしら。確か、恩田選手じゃなかったかしら」

「えー、じゃあ、僕、それ見たいよ。今度、パパの会社に行ってもいい?」

「どうかな、パパに聞いてみるけど」

「パパ、そんなに偉くないから、見に行ったりできないのかな」

「どうかしら。優しい会社だっていうから、大丈夫じゃない? とにかく、今晩、パパが帰ったら聞いてみるね」

佑介は、期待で目が、アニメのキャラのようにキラキラ光っていた。

英介が帰宅して、裕美がその話をすると、

「見るのはいいけど、うちの子供ってことは内緒にしとかないとな」

「じゃあ、誰かに頼むの?」

「おやじじゃあ、もっとまずいし。そうだ、吉川くんに頼むか」

「吉川さんて、部長さんの?」

「吉川くんの知り合いの子供を頼まれたってことで、会社を案内してやってくれるように頼むよ」

「じゃあ、お願いね」