新型コロナによりマスクを着ける事が定着しましたが、世の中には一定数の、聞こえづらいために口元を見て言葉を読み取ろうとする方たちがいます。もしお相手が、口元が見えなくて困っている聴覚障害者だと気づいたら、マスクを外す方が良いか筆談をする方が良いかを聞いて、お相手のニーズに合わせましょう。

聴覚障害者から、スーパーのタイムセールが聞こえなくて不便だとか、多人数で行われる会議がつらいというお話を聞きます。どれほど口の動きから話を聞き取る「読話」が得意な人でも、どこで誰が話し始めるかわからない会議のような場ではその能力を発揮する事は難しいでしょう。

会議では、話した言葉を文字化する機材を用意したり、せめて話し始める前に挙手をするなどの対策をとれば、少しは当事者が楽になるでしょう。しかし気を付けなければならないのは、手話通訳や要約筆記や文字化アプリを使うという事は、当事者のためだけではなく、当事者を含む双方のコミュニケーションのために必要であると知っておく事です。

これは、様々な人が一つの社会を共有するための工夫であり、外国語の通訳が双方のために必要なのと同じです。

聴覚障害者を前にして何の手も打たない人たちが、少数派だから切り捨ててもいいと思っているのか、自分で何とかするだろうと思っているのか、困ったら声を上げるだろうと思っているのかわかりませんが、悪気はなくても配慮のできない人になってしまっているのは否めません。

世の中は、言いたい事が言える人ばかりでありません。じっと我慢している人がいる事に、気づける人になりたいものです。一番良いのは、事前に対策を本人と一緒に考える事です。ちなみに、手話を使うろう者の会話はとても早いものです。

それに対し、文字化する必要のある難聴者の会話はゆっくりにしかできません。同じ聴覚障害者どうしでも、手話を使うろう者による難聴者への配慮が足りないというシーンはありがちです。難しいものですね。

※本記事は、2022年3月刊行の書籍『コレぜ~んぶUDなんです‼』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。