生まれつき聞こえないろうの方たちと、途中から聞こえづらくなった中途難聴の方たちでは、求めるものが随分と違います。手話を知らない中途難聴者には喜ばれるスマホの文字化アプリですが、高齢のろう者との会話にそれを使って話をしようとして嫌がられた事があります。老眼でずっと目で文字を追うのがつらいからだそうです。

アリコさんのお父様は中途難聴で、「補聴器を付けてても、わからんもんはわからん」と怒るそうです。アリコさんは普段から楽し気に早口で話す人なので、補聴器を付けても、ハッキリしない言葉はそのまま大きなハッキリしない言葉になるだけなのでしょう。

もしかするとお父様は聞こえる音域が限られているのかもしれません。正面に立ってゆっくりと大きな口で話すとわかりやすいとはわかっていても、家族というのはお互いに甘えもありつい配慮を忘れてしまいがちです。

怒ってくれるならまだしも、わからなくてもニコニコしてみんなに話を合わせてくれる聴覚障害者は多いので、「微笑みの障害」と言われる事があります。その悲しい努力のせいで、私たちはその孤独感に気づく事ができません。